ジョブ型雇用をなぜ採用しなければならないのか

人事で就活をしていると、3社に1社くらい「ジョブ型雇用」という言葉を聞きます。ジョブ型雇用とは簡単に言えば、業務内容に基づいて必要な人材を採用・契約する事。従来の人に基づいて業務内容を手配する事とは思想が全く異なります。

さて、わたしはこのジョブ型雇用について、各社とも真面目に取り組まないとまずいと思っています。今回はその理由をお伝えします。

ジョブ型雇用とは?

まずはジョブ型雇用の定義を確認しておきましょう。

ジョブ型雇用とは、職務(ジョブ)の内容に基づいて必要な経験・スキルを持つ人材を雇用する制度である。職務内容は、あらかじめジョブディスクリプション(職務記述書)に明記してあり、応募の際もそれに基づいた仕事内容や求められる成果、必要な経験・スキルなどが明らかにされる。

https://www.sbbit.jp/article/fj/50526

ジョブ型雇用では仕事内容が最初から決まっていて、それ以外の職種に変わることがない。そして、企業が人材を育成するよりも、最初からスキルを持ったプロフェッショナルが採用されやすい。教育がある場合も、個人での勉強の機会を会社が支援するようなパターンが多い。

https://www.sbbit.jp/article/fj/50526

ジョブ型雇用を理解するうえで、現在のメンバーシップ型雇用も理解しておく必要があります。

対して、これまでの日本の雇用制度は、メンバーシップ型雇用と呼ばれる。職種や仕事内容を指定しない雇用制度で、たとえば「総合職」などと呼ばれる職種で採用されるケース、新卒一括採用で新人研修の後、適正を見て配属部署が決まるケースなどは、メンバーシップ型雇用の典型と言える。

https://www.sbbit.jp/article/fj/50526

メンバーシップ型雇用では、会社の指示によって職種が変わることが多く、新卒で入社した後に会社が人材を大切に育てることが多い。当てはまらないこともあるが、社歴の長い社員や、生え抜きの社員が優遇される傾向があり、年功序列制度が採られやすかったという特徴もある。

https://www.sbbit.jp/article/fj/50526

ジョブ型雇用で肝となるのは職務記述書です。これをある程度まで具体的に書く必要がありますが、これがなかなか難しいのです。

ここでは詳しくは説明しませんが、営業部と人事部の仕事を比較する事が求められます。

今までは年齢と役職に紐づいていました。どの部署でも45歳・課長なら1,000万円とか。でもジョブ型雇用では、仕事に値札を付けないとなりません。営業部でのテレアポと人事部のコピー紙補充はどちらの値段を高く付けるのか? それを納得性もって設定する必要があるのです。

例えば、45歳・営業課長が「あなたの仕事は人事部の新卒採用と同じ価値です」と言われて納得できるか? 今までの実務を通しての肌感覚ですが、ほとんど納得しないでしょう。私の仕事は人事部なんかよりも圧倒的に価値が高い!と思っている営業部の人はとても多いはずです。そういう方に対してきちんと説明できる設定が出来るかどうかです。

なぜジョブ型雇用を取り入れるか?

ではこんなめんどくさいジョブ型雇用をなぜ各社取り入れようとしているのでしょうか。

優秀な新卒が採れない

最近では日本を飛び出して海外に目を向ける新卒者が増えてきました。また、就活では外資系の方が人気です。なぜ海外が人気になっているのでしょうか。以下の理由がありそうです。

  • 新卒者の賃金が高い
  • 新卒者に「キャリア意識」が芽生えている
  • 日本やばい=海外で働けるように備える

つまり優秀な学生さんは、高度成長期の会社員のように会社に40年勤めていれば後は何も考えずに昇給して、生涯年収3億円が手に入るだろうとはこれっぽっちも考えていないという事です。

ジョブ型雇用を取り入れなければ、そもそも高い賃金を新卒者に与える事は出来ません。年功序列では45歳営業課長よりも優れた新卒者(20代)は居ない事になっています。なので、能力の低いとされる新卒者は低年収で雑用を任される訳です。

高度成長期ではそれで良かったかもしれません。雑用でも高い給与が保証されたし、市場が拡大していたので成績も挙げなくてよかったのです。しかし、すでに年功賃金は崩れ、生涯年収も2億円に減額されています。「パイをどうやって分けようか?」の時代から「誰のパイを削ろうか?」の時代になってます。せっかく良い大学を出て就職して、雑用を10年やっても、「年収がたかだか500万円ちょっとでスキルはありません。よってパイが削られました」になってしまう不安を彼らは抱えています。

なので、10年先の未来を期待するよりも、今ある報酬や役割を得ていく方に賭けていくのは当然の選択です。

時短と相性が極めて悪い

メンバーシップ型とジョブ型をわたしは良くマラソンに例えます。

  • メンバーシップ型:8時間走ってください
  • ジョブ型:42.195km走ってください

どちらが時短に繋がるでしょうか。

もちろん 、ジョブ型雇用の方が早く走れることは、オリンピックを見れば分かるでしょう。 8時間ではなく、3時間や2時間に短縮すればそれが評価に繋がり、その時間で競技を終了することができます。

一方でメンバーシップ型では基本的に「8時間、一生懸命に走る事」が定められています。あまりにも速く走ってしまってコースがなくなると、なぜか隣の人が走っているレーンまで走れということを言われてしまいます。基本的に8時間以内で競技を終えることができませんので、時間を短縮しようという動機に薄いわけです。 

ジョブ型雇用においては、「あなたの仕事はこれ」というものが決まっていますのでそれ以外の仕事を気にする必要は基本的にありません。仕事を早くしてあげれば、早く帰れたりもしくは評価を得てさらに仕事を行い、年収をあげたりすることができます。

一方でメンバーシップ型雇用については、「あなたの仕事はこれ」というものは決まっておらず、8時間勤務する中で最大限の仕事をすることが求められます。そういう状況で働いてしまうと、頑張れば頑張るぶんだけ負荷が増え、同じ課のほかの社員の仕事が降ってきます。

仕事が好きで好きでたまらないという人はいいでしょうけれど、頑張って時間の圧縮をしたい!より多く仕事して稼ぎたい!という状況では、メンバーシップ型雇用というのはモチベーションを奪う制度になるのです。

不公平感が蔓延する

例えば時短で5時間働く社員が8時間働く社員と同じ給料であった場合。 8時間働いている社員よりも時給が高い理由が必要になります。 ジョブ型雇用ですと仕事に値段が付いているため、5時間だろうが8時間だろうが仕上げたものに対して報酬が支払われます。そこに不公平感はありません。

一方、メンバーシップ型雇用ですと、自分の業務内容は決まっていません。強いて言えば仕事は自分の課の中の仕事をこなす事です。そうなれば、いっぱい仕事がある中で時短の人が早々に帰ることは誰も良く思わないでしょう。いっぱい仕事があって忙しい時期なのに、あの人早く帰るの信じられない!という感じです。

ジョブ型雇用を導入すれば何をすればいくら支払われるのかがある程度明確になります。短時間しか働けない方は単価と負荷の高い重要な仕事をし、負荷の低い仕事をやりたい方はそういう仕事を能動的に選ぶことも可能です。 ところがメンバーシップ型雇用のように上司の気分によって重要なのもそうでないものも、誰彼構わず振り分けられるような状況では、不公平感が生じてしまうのも無理はありません。

不公平感は退職理由の大きなものの一つです。業務領域があいまいなままだと、必ず不公平感が出てきます。

ジョブ型雇用を取り入れる為には?

とにもかくにも、まずは職務記述書を作ることになります。職務記述書では「仕事の内容」「仕事の価格」の設定が必要です。そのために最低限必要なことを以下に記します。

給与削減のためではないことを明言

給料削減をするために職務記述書を入れようとすると、「もしかしたら貰いすぎかも?」と思っている社員から猛反発を受けることは必至です。誰しも自分の仕事をに安い値札を付けられたくはありません。そういう社員が軒並み反対に回るとなると改革が難しくなるでしょう。 

結果的に給与削減されるという結果論であればいいのですが、初めから給与削減ありきで貰い過ぎの社員を退職に追い込んだり、減給降格をさせようという動機で取り入れようとしてもうまくはいかないと思います。

基本的にはジョブ型雇用は新しい働き方に対応するために行うものだと思っています。なのでまずはその意義を正しく説明するところからスタートするべきでしょう。

仕事の価格は労働市場と結びつける

必ず揉めるのが営業部と管理部の仕事の価値感の相違です。基本的に営業部の方が価値が上だという認識があります。しかし社内の管理体制を強固にするという仕事の価値が必ずしも営業職より上だということは言えません。

そこの部分を営業部の人と管理部が議論したとしても、お互い主観的な言い争いになってしまうだけで発展的ではありません。ですので、転職市場での人材獲得の難しさをベースに選ぶと良いかと思います。

人事部であれば、組織構築・制度改革を出来る人事プレーヤーはものすごく価値が高く、ベテラン営業職を採用する以上の金額が必要になったりします。 営業職は基本報酬が高いですが、説明会で名刺交換をするような方であれば比較的安価で採用できたりします。そういう労働市場での調達のしやすさをベースに仕事の価格付けをします。

そうなれば、社内評価だけではなく社外から調達する可能性が見えてきますね。

仕事の価格を公表し、公募で担当させる

これはまだ実例がないと思うんですが、仕事の価格を公表した上で、自分が行ってみたい仕事を挙手制で担当するようにするのはどうでしょうか。

例えば新卒採用担当という仕事の価格が350万円だったとします。そこに営業部の方が私がやりますと立候補するのです。 もちろん現在の新卒採用担当者がいますので、その方との兼ね合いとなり、会社判断にはなると思いますが面白い考えだと思います。

これが実現すれば、誰も出来ない高度なものや煩雑な仕事について、給与交渉をすることができます。例えば新卒採用担当を350万円で担っていたとして、誰もそこに公募してこなかった場合には、翌年を400万円でお願いしますということが言えるわけです。そのように自分のスキル次第で大幅な年収アップが可能となります。 

また、今は無理でも将来こういうことをやれば1千万円を超えるんだという目安がわかりやすくなり、キャリア形成としても役に立つのではないでしょうか。

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