新入社員研修でマナー研修の講師をやっているONIKUMAです。つい先日も新入社員に対するマナー研修(マナーマインド)をやってきました。
お辞儀の仕方や、言葉遣いなどを研修で教えるまえに、マインドを教えるようにしています。それは、「マナーは会社の為にやるもんだ」「マナーよりもITスキルだろ?」などと考えてしまい、モチベーションが上がらない人が続出するからです。
断言できますが、新入社員がマナー研修をしっかりやらない事は、しっかりとマナーをたたきこんだ新入社員に対して大きなハンデを背負うことになります。ハンデ戦でも強い馬は勝つ事があるのと同様に、マナーを疎かにしても社会人として成功する人も居ます。ただし、遠回りですよ、という事を私は研修で伝えています。
以下は私がマナー研修のマインド部分でお伝えしている核になります。
マナー研修は会社の為?違います
良くあるマズイ思い込みは「マナー研修は会社の為にやる」というものです。確かに結果的には会社の為につながる知識や行動も多いので「会社の為です!」というのは正解とも言えますが、私はあくまで副次的効果と捉えています。マナーを学ぶ目的としては非常に弱いです。
そこを勘違いして、「会社の為に頑張ろう!」と思っても、よほどの社畜かバカしかモチベーションは上がりません。
なぜなら、「会社の為に頑張る!」というモチベーションで続けていると、普通の論理的思考力を持っている社員であれば、いつかこのロジックに気が付いてしまうからですね。
- 会社の為に頑張ってマナースキルを上げた!
- 頑張ってマナースキルを上げたのに、隣のだらしない先輩の方が給料高くね??
- マナーど下手くその同期と俺、全然給料変わんなくね??
- あれ?!先輩に「っすね」って言っても怒られなかったぞ。別に敬語で喋る必要なくね?
- やっぱ高いレベルのマナー要らなくね??やっぱ業務スキルじゃね??(←長くて4か月目には気が付く)
1~4まではだいたい合ってます。なので、ほとんどの人は5の結論に達して、そこそこ自己満出来るレベルでマナーに対する自己啓発は終了するのですが、私が声を大にして言いたいのは、だからこそマナーを学ぶ事は価値があるという事です。
私の実感値ですが99%の人はマナーが出来ていません。しかも80%は最低限のマナーが出来ていると勘違いしていて、マナー向上すら意識していません。自分はマナーが出来ていないと分かっている人は10%居れば良い方です。※当社の目標管理シートからの推計
図で書くと下のような感じです。
なので、自分はマナーがまだまだであると意識して、日々向上に努めるだけで、簡単に100人中5番位に入れる世界なのです。さすがに10日位では5位には入れませんが、半年も経つとマス層との驚くほどの差が出てきます。(秘書検定2級レベルで十分)
こんな簡単に上位10%に入れる世界があるのに、何で社会人の皆さんがマナーを軽んじるのか私は意味不明でなりません。
javaやoracleDatabaseで上位10%に入る事はかなり難しいと言わざるを得ません。分厚い参考書を複数冊読むだけなく、ベースとなる論理的思考能力や読解力、基礎的英語力と数学力、最新のトレンドをキャッチアップする知的好奇心などが必要になってきます。
他方でマナーに関するテキストは200ページほど。そしてたった1冊です。されど、その1冊を完璧にマスターしている人を、マナー講師を除いて、私は数えるほどしか見た事ありません。
華道の池坊並みのマナーを学ぶには数十年かかるでしょうが、ビジネスマナー検定の最高峰と言われる秘書技能実技検定1級であれば、真面目にやれば2年かからずに取得できます。
なぜ、取り組まないのでしょうか?不思議でなりません。
マナー研修は自分の為に学べ
「顧客に価値を提供するのはマナーではなく、生産物の付加価値だ」という反対意見もあるでしょう。つまり、愛想の良い八百屋から腐った野菜を買う人はいない、無愛想でも良い野菜を売る八百屋から買うでしょう? という事です。
たしかに、顧客にとっては生産物の付加価値とマナーを比べると、前者の方が圧倒的に価値があります。顧客の為を思うのであれば、マナーなどは学ばずにITスキルを高めなさい!という発想は合理的とも言えます。
しかし、自分にとって、ITスキルとマナースキルはどちらが大事か考えるとどうでしょう?
人生には冠婚葬祭という厳粛で1回きりしかない、ミスが許されないイベントが複数回訪れます。たとえば以下の時、普段のマナーを疎かにしていると非常にまずいことになります。
- 喪主のあいさつ
- 新郎・新婦のあいさつ
- 仲人のあいさつ
- 弔辞
- 結納や新郎新婦家両親へのあいさつ
- 冠婚葬祭での列席者への気配り
普段から敬語で話す事に慣れていなければ、とっさのときに幼稚な学生言葉が出てくるのです。特に結婚する時に相手方の親に対して幼稚な言葉づかいや振る舞いをしてしまうと、その後の結婚生活に多大なる影響を与えかねません。
「同じ職場で働いてるッスネェ~」「お父さんは座ってて良いッスよ、自分やるんで」とか・・・。初対面の大事な人に対してこんな言葉遣いをする人に、安心して可愛いわが子を預けられるでしょうか?? そもそもそんな人を伴侶としたい人は居るでしょうか?
一方で「同じ職場で勤めております」「お父様はどうぞごゆっくりお寛ぎください、わたくしが差し上げますので」という言葉遣いをする人であるとどうでしょうか? その差は大きくありませんか?
また、葬儀の場で会社関係者・親族が見守るなかで喪主としてあいさつを述べるときに「んでぇ、まぁ」などと幼稚な言葉遣いが出てしまったら、家名を汚しかねません。
それでなくとも人生初、1回きりの緊張を強いられる場面ですから、普段から敬語を使い続けて体が覚えているレベルにならなければ、非常にたどたどしくなり、相手からは「未熟者」として簡単に見抜かれてしまいます。
敬語だけではありません。礼の仕方・間合い・発声、着席の場所・姿勢、身だしなみ、場にふさわし表情の作り方、臨機応変な対応など、普段からマナーに対する配慮が無ければ到底身に付かないものばかりです。
そして、おそらく一番困るのが
- 転職活動の時の面接
です。今は半数の男性は50歳までに1回以上の転職をしています。今後は終身雇用の崩壊と産業構造の変化により、雇用の流動化は益々進んでいく事を考えると、自分は一生で一回も転職面接を受けないと考える事は非常にリスキーになります。
いざ転職活動をする時になって、非常に困るのが「マナー」です。特にITベンチャー系などで普段からマナーに気を付けていない環境で長年過ごしていると、敬語が怪しい、お辞儀や身だしなみが怪しい、といった重い足枷をはめることになります。
面接官も人間ですから、30秒で第一印象を形作ってしまいます。入室、着席、アイスブレーク、ぐらいで面接官は「応募者の人間性は大体こういう感じ」という判断を下します。そこでマイナスの印象を与えてしまうと、スキルがあってもなかなか厳しい戦いを強いられます。
なぜなら、一次面接官にとって一番困るのは「なんであんな失礼な奴を二次面接に上げたんだ?!」と二次面接官(たいてい上司)に叱責を喰らう事なので、「候補者のマナー不足」というのはかなりのリスクがあるのです。
なので、社会人経験がある以上は、少なくとも大学新卒を超えたレベルのマナーは必須であり、それがないとすると「はて、この人はマナーを要求される大きな仕事を任されなかったのかな?」と疑問符を付けられ、大きなハンデを背負って転職戦線を戦う事になります。
マナー以外で新人はどうやって成果を出すの?
普段からマナーを学んでないと、ここぞという時に自分にとって困る事になるのは分かって頂けたと思います。
そして新卒に限ったことなのですが、マナーというのは新卒入社の方の大きな武器になる事も付け加えます。
新卒が配属されるのが入社3カ月後だろうが、6か月後だろうが、配属直後に先輩社員の半分でも成果を出せる人材はほぼ居ません。
- 年収800万の40歳プログラマーが20分で作るプログラムを、40分で作れる
- 年収800万の40歳コンサルタントが抱える顧客10社のうち、5社を担当できる
こんな新入社員が居れば、相当デキる社員として、社内で即評判になるでしょう。現実には学生時代に余程ビジネスにのめり込んでなければ、そこに至るには数年は掛かります。その間は新入社員は「研修中」として、成果よりも給料支払いの方が多い、つまり会社から投資を受けている半人前の状態です。
一方で、マナーは違います。
- 年収800万の40歳プログラマーよりも上手い電話対応をする
- 年収800万の40歳コンサルタントよりも上手い会議室の運営をする
のは新入社員が配属された瞬間に十分達成可能です。そういった意味では会社に即座に成果を納められるのがマナーなのです。
ところで、マナーは顧客の購買判断に対して重要な要素ではないのでしょうか? つまり、普通の野菜を売っている愛想の良い八百屋と、普通の野菜を売っている愛想が悪い八百屋が在った時に、お客さんはどちらを取るでしょうか?
100人中、50対50に分かれるのであれば、顧客の購買行動には愛想などマナーは関係ないと結論付けられます。
しかし現実には、圧倒的な差が出てくるはずです。それは「売る物が同じような品質であれば、売り手のマナーは大きな選択要因になりえる」と言える事を意味します。
特に数か月前まで大学4年生として学生であった新入社員に対し、「人事担当者のマナーで入社辞退を決めた会社があるか」を聞いたところ、ひどく納得できたようです。外側から見て同じようなIT企業が乱立している場合、選択する時の大きな決め手となるのはマナーなのです。
そこで新入社員が「メチャクチャ愛想の良い社員」となれば、そのチームは競合他社に対して大きなアドバンテージを得られます。なぜなら、特にITなどの先進技術は顧客に違いが分かり難いので、どれも同じように見えてしまうからです。
だからこそ、IT企業であればNTTや日立などのメーカー系、東証一部上場などのブランド力が大きな営業力になるのです。野菜は目で見て味を見て品質を確かめられますが、ITは目で見えませんし味もわかりません。だから変な話ですが、売っている商品以外で顧客は商品の価値判断するしかないのです。
これは医者も一緒ですね。自分が手術を施されるとして、気にするのは「執刀の確かさ」ではなく「病院名」や「口コミ」、「医者の人間性」だったりします。それは医学の知識は素人には到底分からないので、売っている商品以外で価値判断するしかないからです。
そこで、重要な価値判断の一つである「売り手のマナー」がしっかりしているという評判を顧客より手に入れられれば、新入社員はまず先輩社員から一目置かれることになります。間違いありません。
- そういえばさ、御社に入った新人さん、メチャ丁寧に案内されたんだけど、ああいう人を採用するコツみたいなものあるの?
このような評判を顧客より頂いた上司の心境はどうでしょうか。
ですので、マナーというのは意外に顧客の購買行動を左右する要因であるのに、高める人はあまり居ないため競争力があり、しかも即戦力としてチームに大いに貢献できる、新入社員にとっては実に「オイシイ」スキルなのだという事を強調したいのです。
それゆえ、「あれ?マナーって別に要らないじゃん?」と思って自己研さんを放棄するのは非常にもったいないのです。
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