面接の達人は居るが、面接官の達人は居ない

面接の達人と言う本があります。

久しぶりに書店で立ち読みしました。面接官だったころは毎年必読で、受け答え丸暗記型の学生に対して「その志望動機、メンタツ(面接の達人の略称)まんまだね?」といじめ・・・いや、鋭角な質問で受験者の心をえぐったものです。

これを見ると「本当に学生さんは大変だなぁー」と思う一方、私が就活生だった頃と何も変わってない就活の現状に絶望的になります。何を絶望しているかというと今の就活スタイルに疑問を感じ、改善をしないセンパイ人事達にです。

ここ10年で本当に何も変わってないです。恐らくですが、リクナビが出来てから、20年程全く変わってないと思います。

それは50年続いている終身雇用と年功序列の上で、「就活は洗練されつくした」と言う人も居ると思いますが、私は現在の就活は全く洗練されていない、極めて生産性の低いシステムだと思っています。

今回は、鬼人事から見て、どの点を絶望したのかを記します。

絶望その1:面接1発勝負のフローを改善しない

面接の達人のWeb記事にも以下のように書かれています。

じっくり話してみると面白い人材なのに、10分間の面接で、自分を売り込むとなると、さっぱりよさが伝わってこないのだ。
-中略-
たかだか10分やそこらで人間を判断されてはたまらない、と君は言うかもしれない。
そういう人はサラリーマンには向いていないから、ペンションでも経営したほうがいい。
ビジネスの現場では10分で商談を進めていかなければならないのだ。

現状での面接では確かにその通りです。人気企業であれば10分かそこらの面接で採否を決定します。

でも、それ、本当に良いの?

企業は大事な商談を10分のプレゼンのみで進めたりはしません。サラリーマンの生涯賃金が2億円とすると、40年で2億円の投資案件に対して、10分×3回のプレゼンで全てを決めるなんて無謀なフローは設定しません。

実際に投資案件をコンペで決める場合

  • 企業担当者が、候補企業とのミーティング(複数回)
  • 企業担当者が、候補企業の情報収集
  • 候補企業が、企業担当者へ、数十ページの企画書を提出(複数回)
  • 企業担当者が、莫大な費用を掛けて与信調査
  • 企業担当者が、役員への説明の為の内部資料を作り
  • 複数の候補企業が、一同に会議室に集まりコンペ

位のフローは最低限設定するでしょう。

確かに最後のコンペで与えられる時間は10分かもしれませんが、候補企業はそれまでに複数回、それこそ数時間かけて企業担当者と会っていますし、候補企業からA4で100枚超の莫大な量の提案書を企業担当者は受け取っています。

もし、就活スタイルで投資案件をコンペで決めるならば

  • 企業担当者が、候補企業とのミーティング(30分の1本勝負!)
  • 企業担当者が、候補企業の情報収集はしない!
  • 候補企業が、企業担当者へ、A4で3枚位の企画書を提出(1回だけ!)
  • 企業担当者は、与信調査なんてしない!
  • 企業担当者が、役員への説明の為の内部資料は面接評定表A4で1枚だけ!
  • 複数の候補企業が、一同に会議室に集まりコンペ

というフローになります。これで投資先の候補企業を絞るという事になります。

これ、実際にやったら役員からブン殴られますからね(笑)

就活スタイルというのはこんなずさんな状態な訳です。それなのに、学生に対し「面接10分1発勝負で自分を売り込めなきゃサラリーマン失格だ!」なんて、私から言わしてもらえば「そんなフローで2億円の投資案件を判断する採用担当こそサラリーマン失格だ!」です。

(※あ、誤解のないように言っときますが、メンタツの著者を悪く言うつもりはないです。著者レベルで就活を分かっている方なら当然私と同じような就活の問題点も把握されていると思いますし、おそらく著者としてのポジショントークがあると思いますので)

こういうサラリーマン失格な採用担当がうようよいるせいで、以下のようなリスクが放置されています。

  •  本来なら非常に優秀な人材だが、1発勝負で緊張した人を低評価するリスク
  • 実務能力が劣り、プレゼンテーション能力(容姿含む)に長けた人材を高評価するリスク
  • プレゼンテーション能力が比較的不要な事務職や研究職に対して、その能力が評価に深く相関するリスク

結果的にリスクは顕在化し毎年相当数の受験者が正しく評価されずにいるから、メンタツが毎年のように売れ続けているんじゃないでしょうか。

例えば共通一次面接会を実施すれば、これらのリスクは相当程度減らせると思いますが、企業はそういう事をキチンと考えてる?と絶望するわけです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする